理想の行方

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話は数日前に遡る 「なんと!其は真実(まこと)であるか?」 エクシュリア三世は、思わず玉座の上で声を荒げた。 居並ぶ廷臣の間からも微かなどよめきが起きた。 先王の逝去により即位してわずか十年。 先年ようやく齢三十を越えたばかりの若さなれど、冷静にして公正な統治により、『明哲王』の異名を持つ王には珍しい事である。 「はっ、昨日までの調査の結果では、、まず間違い無いかと、、思われます。」 対するは、随所にきらびやかな装飾を施された黒のローブを纏った老人。 王国練法士筆頭のアルバーチェである。 先王から仕え、齢は既に八十を越えている。 常ならば、淀みなく紡がれる言葉が、興奮の為か所々詰まる有様である。 事の発端は、五日前に戻った遺跡調査隊が持ち帰った『珠』と『台座』である。 南方のグレ砂漠にある通称『封神の遺跡』 かねてより、秘宝が隠されていると噂され、過去に多くの者達が挑み、何も得られなかった場所である。 調査の中、偶然発見された『隠し通路』その先にそれはあった。 子供用の椅子程の大きさの台座。 幾重にも魔法紋章と魔法珠を張り巡らした、それは封印結界。 そして、その上には乳幼児の頭程の宝珠。 それは刻々と色を変え、さながら生ある者の鼓動のようであった。 「これほど高度な古代結界、見た事はございません。 伝承にある、イシュハーティを封じた珠に間違い無いと思慮いたします。」 アルバーチェは、いつになく多弁で口調は熱を帯びていた。 「余は、イシュハーティのごときは、伝承の類と思っおったが、、よもや真実であったとは。」 王の声は憂いに重く沈んでいた。 「しからば、卿に問う。」 しばし黙考の後、王はアルバーチェに問い掛けた。 「イシュハーティは、さほどに強き者であろうか?」 「畏れながら陛下、あれほど強力な封印を施されております以上、相当の力を有しておるは間違いないかと、、しかしながら、、」 老練法士は一旦言葉を切り、若き主君に視線を向けた。 「許す、、続けよ」 「はっ!」 主君に感謝の一礼をし、老練法士は再び語り始めた。 「しかしながら陛下、封印できた、と言う事は、人の手で御しえると言う事であります。」 すがる様に見上げる両の目は、いつしか強い光を帯びていた。
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