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武田の城内の一角……いつもならこの時間に煩いくらいに聞こえて来る声が聞こえない事に皆が違和感を覚えていた‥。
「はぁ…、こりゃ見事に“風邪”だね旦那」
呆れた様な声で呟くのは、真田幸村に使える忍‥猿飛佐助
「ぅ"~……、ざずげぇ‥」
…そして、布団の中で情けない声を上げているのは佐助が使える真田幸村その人。
「ぅ"~…、じゃない!
全く、最北であんな寒々しい格好して戦ってりゃ風邪もひくってぇの!」
「う"ぅ…、あれごとき寒さで風邪引くとは……この幸村一生の不覚ぅ‥ッ!」
そう言うなり幸村は、布団をすっぽりと頭まで被ってしまった。
しかも布団の中で泣き出す始末‥
「あ~…、旦那?
もう怒ってないから、ほら‥顔だしな?」
佐助が、あやす様に優しく言葉をかけても‥
「叱って下ざれ~ぇっ、お館様ァァッ!!」
うわぁぁん!と更に声を上げて泣くばかり…
勘弁してくれよ…と、佐助は盛大に溜め息をついた。
(全く‥いつまでも子供なんだから……この人はι)
「だーんーな!おとなしく寝てないと、治るもんも治らなくなるよ?」
そう佐助が言っても、泣き声が止む気配は無く…。
どうしたものか‥と、顎に手を当てて考えてた佐助が、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
「旦那~、早く風邪治さないと大好きな甘味が食べられなくなるよ~?」
いいのかな~?
と、佐助が呟けば……
「ぃ、いやでござるぅぅッ!!」
ガバッと、勢い良く起き上がる幸村の目は、先程とは違う意味で涙を溜めている。
「じゃあ旦那、俺の言う事ちゃんと聞く?」
そう佐助が聞けば、幸村は首を縦にぶんぶんと振る。
「本当に?」
「ほっ、ほんとうだ!
この真田幸村に二言は無いッ!!」
「言ったね……旦那」
それじゃあ…と、佐助が一つのお盆を幸村に差し出す。
しかし、お盆の上に乗っているモノを確認すると、幸村の顔はみるみる青くなっていく‥。
「Σさ、佐助ぇ…、こっ、これは……ッ」
「そ、薬」
そう、佐助が幸村に差し出したのは、ただの“風邪薬”だ。
だが、幸村は、この世の終わりとでも言いたい程に顔を歪めていた‥。
「い…「嫌なんて、言わないよね?旦那」
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