夢想

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激しい雨が地面に叩きつけられ、跳ね返る水しぶきのせいで、まるで上下から雨が降っている様だった。 やはり読み違えたか…… 辺りは次第に暗くなり、やがて男の視界を奪って行く。 もはや引き返す訳にもいかぬ…… 男は道、否、そこがもはや道とは言えぬ、草ばかりの山道を必死に歩いていた。 いくつもの谷を越えた事か…… 激しい嵐の中、山深い道ともいえぬ山道を歩く内に男の着物は破れ、履物もいつのまにか無くしていた。 男は息も絶え絶えの状態で、向かえの山の頂上付近に明かりが点っている事に気が付いた。 あそこ迄いけば…… 男は谷沿いにつづく、辛うじてソコが道だと解る山道を歩きだす。 雨は益々激しさをまし、まるで、男をこの先に行かせまいとしている様であった。 どれくらい歩いたであろうか…… ぼんやりと吊橋が見えた時点で男は力尽き、倒れてしまう。
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