15人が本棚に入れています
本棚に追加
激しい雨が地面に叩きつけられ、跳ね返る水しぶきのせいで、まるで上下から雨が降っている様だった。
やはり読み違えたか……
辺りは次第に暗くなり、やがて男の視界を奪って行く。
もはや引き返す訳にもいかぬ……
男は道、否、そこがもはや道とは言えぬ、草ばかりの山道を必死に歩いていた。
いくつもの谷を越えた事か……
激しい嵐の中、山深い道ともいえぬ山道を歩く内に男の着物は破れ、履物もいつのまにか無くしていた。
男は息も絶え絶えの状態で、向かえの山の頂上付近に明かりが点っている事に気が付いた。
あそこ迄いけば……
男は谷沿いにつづく、辛うじてソコが道だと解る山道を歩きだす。
雨は益々激しさをまし、まるで、男をこの先に行かせまいとしている様であった。
どれくらい歩いたであろうか……
ぼんやりと吊橋が見えた時点で男は力尽き、倒れてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!