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「ふーん……
結構切ない話しなんだね……」
中学3年生になる娘が、軽ワゴンの助手席の窓をいっぱいに開け、まだ肌寒い風に髪をなびかせながらいった。
「俺も最初はただの伝説だと思ったんだけどな、現存している場所だってのを発見してね……
御免な、遊園地とかじゃなくって」
娘は開けていた窓を閉じて俺を見る
「いいよ別に、面白そうだし、それにお父さん、行って見たかったんでしょ」
「ああ」
娘がそんな事を言ってくれるのが嬉くて、つい口元が綻んだ。
車窓からの風景は一面山々に広がる深緑の世界で覆われていて、自分がどのくらいの距離を走ったかも解らなくなる。
俺は途中のコンビニで買ったカンコーヒーに手をのばしプルタブを開け口をつける。
「後どれくらいか見てもらえないか?」
娘は自分の膝に置いた地図を開くと、今来た道を指で追いながら
「え~っと、後少し走ると石切って所みたい、T字路に出るから、そこを右に曲がって。」
「分かった」
長く狭い山道を10分程下ると小さな橋があった。
「あ、ここ右だよ」
橋を狭く短い橋を渡りウインカーをだして右折すると左手に民家が見える。
「暫くすると宿泊施設が有るって聞いたんだけどな……」
「宿泊施設?」
「ああ、廃校になった平屋の建物を使っているらしい」
狭い一本道を5分程進むと、右手に比較的新しい建物と、広場が見えて来た。
?
俺はそのまま直進しようとしたが、新しい建物の横に廃墟の様な建物が建っているのに気付き、広場に車を留めた。
「お父さん……
宿泊施設って……
ここの事かな?」
娘と共に車を降り、その建物を見ると、確かに作りは昔の学校の様だった。
この広場もグラウンドだったのだろう。
グラウンド隅にはバス停がある。
「静かな所ね」
娘は宿泊施設に近付いた
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