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ゲートを通過してしばらく歩きながら、ふ、と景色を眺める。
杉の木の間から向かえ側の山と、ここから遥か下に流れる川が、とても小さく見えた。
砂利が多少歩き辛い様で娘のペースが中々上がらなかった。
「大丈夫?行けそうか?」
「うん、ちょっと歩き辛いだけ、大丈夫だよ」
娘は少し笑いながら答えた。
「あと10分位したら休憩しよう」
俺は歩くスピードを落とし娘の後ろについた。
余り変わりばえのしない景色を見ながらしばらく進むと、しだいに道は下り坂になってきた。
「お父さん、1回休憩!」
娘は道端に転がっていた大きめな石に腰をおろした。
「足はどうだ?」
「大丈夫、それよりお父さん、私にもコーヒーくれない?」
ナップサックからコーヒーの入った水筒を出し、プラスチックのカップに注いで娘にわたした。
「ん、お父さんの煎れたコーヒーは美味しいね。
喫茶店やればよかったのに」
俺は自分の分をカップに注ぎ水筒をしまう。
「そうだな……
それも悪く無いな」
ポケットからタバコを取り出すと娘が不機嫌な顔をする。
「お父さん、今何本目?」
喫煙に反対している娘から、俺は一日に吸えるタバコの本数を制限されていた。
「今日は朝から3本目、優秀だろ?」
そう言ってタバコに火を点る。
大きく煙りを吸い込んで一度口の中で燻らせてから肺に溜め、ゆっくりと煙りを吐き出した。
「またそんな吸い方して……」
娘が俺の身体を気遣かってくれているのは解ってはいるのだが、タバコはどうしても辞められなかった。
5分程小休止してから、再び歩きだした。
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