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 たって、そもそもこの下の階(部屋?)迄は、二戸でワンフロアで、彼の住まいする最上階に当たるこの部屋だけが丸々ツーフロアを使い切った”二戸で一戸”と言う何とも贅沢な作りになっている。だから、床面積は二倍で、専用テラスも一番広い訳だ。  そんな最高級億ションで、彼は実に優雅に、そして愉快に学生生活を楽しみ、独り切りの自由な時間を有効活用していた。  因みにここは、分譲マンションである。 「でぇ~っっ。靴の中迄グッショリ。水虫になっちまう。ほ~らっ。グズグズしない」 「あっ…はい。お邪魔…します」  自分の生活リズムと些か違うので、何かこう、調子が狂う。しかし、それは言葉にせず、恐る恐る入って来た少年にタオルを押し付けた。 「そこの突き当たりがバスルーム。着替えは出しておくから、早く身体を温めて来い」 「いえ…僕は…別に…。お先に…どうぞ」  やっぱりどーしても、テンポが狂う。  眉間に皺を寄せ難しい表情を作った青年が、何の脈絡もないままにポンと尋ねて来た。 「お前、今幾つだ。俺は二十五だ」 「十五…です」  名前の前に年齢と言うのもおかしな話だが、妙な圧迫感のあるそれに正直に答えたら、青年の表情がもっと嫌そうになった。  で、自己防衛の為の唯の条件反射で少し身を引いたら、本日三度目になる怒声を、頭のずっと上から浴びせ掛けられた。 「だったらつべこべ言わずに大人の言う事を聞くっ! とっとと行けっ!」 「はっはいっ」  普段、怒られる事がないもんだから、今の大声でビクリと身体に力が入り、結果、怜は追い立てられるようにして…否々、逃げるようにしてバスルームに入った。  パタンとドアを閉め、まずは大きな溜め息一つ。それから、濡れた服を脱ぎ、浴室に足を踏み入れた。  さすが最高級億ション。備え付けのお風呂はやっぱり、ちゃちなユニットバスではなかった。広々とした洗い場に、ゆったりと寛げる(ような気がする)浴槽。足を伸ばしてつかれる。  長風呂が出来る状況でない事は自覚していたので、ちゃんと観賞はさせて貰ったけどシャワーで済ませ、さっさと出た。  脱衣所に置いてあったトレーナーとトレパン、新品の下着。  いつ、ここに来たんだろう。  ふとそんな事を考えてしまったが、ともあれ、用意してくれた着替えを借りる事にした。
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