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自分が着ていた服は、只今洗濯機の中でグルグル回っている。
これ、この後どうなるのかな? 冷え切っていた身体を温めたのに、濡れたままの服を身に着けるのも嫌だなぁ。
ま、今日は金曜日で、姉も出掛けて居ないから、服が乾く迄(あの、お兄さんが許してくれるなら)待っても良いし、お泊りしたって特別な問題は起きないが、初対面の人のお宅にいきなり泊まるのも、何かちょっと違うような…。
そんな事をボンヤリと考え、ハッと我れに戻った。
「…。おっきい・・・」
何も考えずに出されてあった物を身に着けていたのだが、余りのサイズの違いに両腕を広げてしまう。下着もブカブカだ。でも、これ以外に着る物はなく、それで仕方なくトレパンの裾を三回程折り返し、ウエストの紐でパンツとトレパンが擦り落ちないようにして、トレーナーの袖も三回折り返し何とか手だけ出して、脱衣所からも出た。
「お先…しました」
「あ? ああ」
出た時丁度電話中で、だから、彼が受話器を戻してから声を掛けた。
「…」
背後より届いた申し訳なさそうな細い声で振り返った青年が、お風呂上がりの少年を凝視している。
さもありなん。
凡その見当は付いていたが、よもやこんなに小さいとは思わなかったので、マジマジと見遣ってから大爆笑。
「ぷっ。くーっくっくっくっくっ」
「あっあの」
「悪い悪い。仕方ないわな。くっくっくっ。冷蔵庫の中にヂュース入ってるから、適当に飲んでな」
笑いながらそう言って、彼はバスルームに姿を消した。
が、怜はムッツリしている。
それもそうだろう。自
ナリ
分の今の形の不格好さは解るけど、だからっていきなり笑わなくても…。
別に僕が小さい訳じゃない。そりゃ確かに、体重は平均に届いていなかったが、身長はちゃんと平均以上有る。唯単に、自分がデカイだけじゃないか。
そんな事を、小さな声で口の中でブツブツ。それが、いきなり止まった。と、言うのも、彼が、僅か十分足らずで出て来たからだ。その、見事な烏の行水振りに驚いたのは事実だったが、怜がド赤面して俯いたのは別に原因があった。
トクトクと足を速くした心音。顔が、燃えるように熱い。
「…。何だね、それわ…」
このボーヤの奇妙な挙動には大分慣れたと思っていたのだが、まだまだ修行が足りないらしい。
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