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 姉の話を聞きながら、己の存在を改めて考えた。    アキミ  姉・聡美が、幸せそうな笑みを浮かべて紹介してくれたのは、結婚を前提として付き合っていると言う男性。  人の良さそうな笑顔を持った、中々の二枚目だった。しかし、姉が台所に消えたら、一変した。  眼鏡の奥の一重の細い目が、怜を冷ややかに見据える。 「怜君だったね?」 「はい」 「君は、お姉さんと二人でここで暮らしているんだよね?」 「そうですけど」 「ここの土地と建物の名義はお姉さんかい?」 「その筈ですけど」 「そう」 「それが何か?」 「いやいや。将来的に君 ・ も養う事になるから、名義を僕に変更して貰わないとね」 「貴方に養って貰う気はありません。姉に養って貰います」 「それは無理だ。結婚したら家庭に入って貰うし、預貯金も、僕が管理する事になるから」  いきなり何を言い出すんだ? この男わ! 「姉は、結婚しても、仕事は辞めませんよ」 「僕が言えば辞めるさ。彼女は僕を愛している」 「貴方は、姉を愛していないんですか」 「愛しているさ。T大卒のこの僕が、学歴のない        ・・・ 彼女と結婚して上げるのだから。風景は、美しいに限るしね」  何だ? この男。姉を何だと思っているのだ。胸が悪くなった。学歴重視のこの男の何処が、良かったのだろう。姉は、どう思われているのか承知しているのか?! この男は尊敬出来ない。信頼出来ない! 同じ場に居るだけで気分が悪い。 「お待たせ。夕食の準備出来たわよ」  笑顔と共にそう言ってリビングにやって来た姉に尋ねようと思った。 「話の腰を折ったかしら」 「姉さん、結婚したら仕事」 「そんな事ないよ! さっきから良い匂いがしているから、特別正直な僕の腹の虫が鳴りっぱなしだよ!」  姉が来た瞬間に男の顔から鋭さが消え、自分の問い掛けを遮るように大きな声で姉を歓迎した。     マモル 「まぁ、守さんったら」  両頬を朱色に染め俯いた姉に、守と呼ばれた男が近付きその細い肩を抱いた。  姉は知らない? だとしても、選んだのは姉だ。オブザーバーに過ぎない自分が、口に出して良い事ではない。でも、この男と同じ卓は囲みたくなかったので、姉には逃げられないようにと生意気な口を叩き、勉強の時間だからと自分の部屋に戻った。
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