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 今日の出会いが唯の擦れ違いなのか、それとも、もっと別の意味を持つモノであるのか…は、今はまだ解らない。もし後者であったなら、今ここで焦る必要はない。そして、前者なら、過去の出来事として記憶の中からデリートされる。  兎も角今は、それ以外のそれ以前の事をやりましょうか。 「面白い子やねぇ。ま、座りなさいよ」 「あ、はい」 「ほいよ」  リビングのソファーに座るように勧め、お子様にヂュースを出してやる。 「あっ。済みません」  どう致しましてと軽く返し、素肌に綿シャツを羽織りながら自分は缶ビール。 「ほで、お名前は? 俺  カワムラコウイチ は河村宏一。歳はさっき言ったな。只今T大の三年生。若干名にはサギだと言われているが」 「? あ…あっと、僕は、庄司…怜…です。中三です」 「だしょうねぇ、十五歳ってったら。で? 雨が嫌いで家に居たくなくて、独りになりたくて、でも、独りになりたくないってか」  責めるような口調ではなかった。寧ろその反対に、気安くも親しみの込められたモノで、だから、意識もせずに頷いていた。 「その時々で、大人扱い受けたり、子供扱いされたりする年頃だからなぁ」  過去を振り返るような声。  それに対して特別なリアクションは返さなかったが、向かいのソファーに座っていた宏一が、いきなりニッと笑った。  それにびっくりして身をのけ反らせる。 「腹減ったろう。ずっとあそこに居たんなら」 「いっいえっ…別に…あっ」  無言で促されたそこには時計が置いてあって、文字盤の示すところを理解したら、腹の虫が、都合良くか悪くかは判らないが鳴いた。 「くっくっくっ」  怜が改めて赤面し、深く俯く。  宏一の笑い声が少し勘に触ったが、さっき程嫌なモノではなかった。多分きっと、彼の、飾り気のないサバけた人柄に安心してしまったせいだろう。あんな風に頭ごなしに怒鳴られた事もなければ、あんなに普通に心配して貰った事もないし、さも当たり前と手を伸べて貰った事もないから、一度に気が抜けたのかも知れない。  元々怜は、人見知りの激しいタイプで、初対面の人物に対しては極め付けに無愛想だ。相手に弱みを見せてなるものかとはっきり身構えるから、極端に口数が減り表情も変えない。だから、第一印象が極悪に悪かった。
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