2590人が本棚に入れています
本棚に追加
それから仕事の話。
宏一が職を辞したと同じ日にカワムラを退職して一緒にコーンズに行く重役は五人。勿論、宏一の大親友、隆史もメンツに入っている。そして、庄司物産と野口商会は、九月一日からコーンズの傘下に入る予定。外資系の企業になる訳だが、社員にとっては急な話なので、庄司物産は社長のポチが、野口商会は前社長の隆史が、業務整理と社員整理を行っている。
「カワムラをどうする気だい?」
「潰す」
「後悔しないか?」
「しない。お袋との大切な思い出の詰まっていたカワムラによそ者を入れ、好き勝手に人事異動させて、カワムラの土台を揺るがしたのは親父だ。と、同時に、レイを廃人同前にしたのも親父だ。たった一言、レイに心から謝ってくれたなら許したが、もう、遅い。本人も、謝る気はないと言ったそうだし。レイを二重に苦しめた代償だ」
「ん。解った。お前とレイの二人は、正式に養子として貰い受けよう」
「はい」
「レイは、ニューヨーク州立大学に編入させような」
「はい、パパ。ごめんな、急な話で」
「家は、いつでもお前を受け入れる体制は整えていたよ」
「有り難う」
「サムソンズとの経営統合も行っているから」
「えっ! どうして?」
「お前には、コーンズは小さい」
「小さいって、全米No.1じゃないか。つまり、世界一。それが小さい訳ないよ」
「いいや。お前の舞台は世界経済界だ。それに、これは、お前がまだ日本で大学生をしていた頃に出た話だから、急な事ではないんだ」
「パパ」
サムソンズグループは、宏一が英国に留学していた頃にホームステイしていたリープ・ウッド氏がオーナー社長をしている企業の事だ。ホテル経営を主にしている、世界のホテル王。その二つが経営統合しようとしているなんて………。
「お前のイギリスのパパ、リープも、二~三日中にモナコに来る事になっているから、詳しい話はその時だ」
「パパ。俺には無理だよ、そんなの」
「いいや。お前にしか出来ない事だ。本当は、これにカワムラも加わる予定だったのだがね」
「ぇっ!?」
「ま、詳しい事は、リープが来てからだ。そら、ヒロ。サンルームに戻るぞ」
「パパ!」
「何だい?」
「本気で俺にやれると思うのか?」
「ああ。これは、リープもヤスアキも同じ意見だった」
「親父も?」
最初のコメントを投稿しよう!