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 近所でも評判のガキ大将は結構な怖がりで、特に、お姉ちゃん大好きだったから、姉が居ると急にメソメソし、居なくてもメソメソしていた。  これで最後になるだろう要らないモノを埋めた庭先を見遣り、もう一つ溜め息。けれど、二度と振り返る事はなく、さっさと手を洗うと戸締まりをして出掛けて行った。  秋の日はつるべ落とし。もう、すっかり夜になっている。  怜は、何も考えず、繁華街を歩いた。  高校受験前の追い込み時期である。こんなトコを先生にでも見付かったら大騒ぎだが、そんな当たり前の事すらも、今の怜には考える余裕がない。  唯、あの家に居たくなかった。  けれど、全くの独りになるのも嫌だったから、干渉する人間の居ない繁華街に足を向けていた。ここなら、丸っ切りの独りになる事はない。知らない大人達ばかりだが、そこここに人間が溢れている。そして、干渉される心配もない。 「?」  深く俯き、人波に逆らうようにして歩いていた怜が、何かに驚いたように顔を上げた。  今、確かに、ポツッと頬に雫が当たった。 「…雨…だ」  ボンヤリと立ち尽くしているとあっと言う間に雨足が早くなり、土砂降りになってしまった。  雨の中を歩くのは嫌いじゃないが、今の時期、こんなに冷たい雨に打たれたんじゃ引かなくても良い風邪を引いてしまう。  風邪を引いて苦しいのは自分だが、この時期に体調を崩したら絶対に、姉の元に知らせが届くだろう。それだけは何としても避けたい怜は、辺りに視線を巡らせ、近場のお店の軒下に逃げ込んだ。  ちょっと顔を出して空を見上げる。  すっかり夜だから、雲の厚さがどうこうと言うのははっきりしなかったが、明らかに、天気の良い夜の空とは違った。  何処となく朱く、不気味に立ち塞がる雨雲。  遠くの空が光っていた。  空気が振動しているのが体感出来る。  唯の通り雨だとは思うが雨足がどんどん激しくなり、どうも、簡単には通り過ぎてくれないようだ。  体感温度がグンッと下がった。  怜は無意識の内に胴震いし、奥に身体を寄せた。 『どうしよう』  いかにも他人事とボンヤリと考え、足下にに視線を落とす。そして、アスファルトを強く叩く雨雫を見詰めた。  どうもこうも、彼に選択肢はない。
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