序章 ー侵入者ー

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今ではないいつか。 ここではないどこか。   あえて位置決めをするならば、我々の時空からXーマイナス49 Yープラス07 Zープラス1062 と、近しい平行の世界における、32世紀という時間。   その宇宙の片隅に存在する天の川銀河、第三腕中央付近にある恒星。   その第八惑星『海皇星』公転軌道上付近。   『それ』は、故郷の惑星へたどり着くべく、長い年月の間宇宙空間をさ迷い続けていた。   ただの好奇心から惑星を離れ、星の世界を旅してみたいと思い立ち、宇宙へ飛び出したのだったが、その時期が悪かった。   時を同じくして、最大活動期に入ったばかりの太陽がおこした強烈な風に煽られて吹き飛ばされてしまい、ようやく太陽風が弱まったときには、太陽系外縁部まで運ばれてしまっていた。  したがって「それ」は、弱いながらも吹き続ける太陽風に逆らいながら、孤独なまま故郷を目指してあてどなくさ迷い続けることとなった。
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