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三
こうしていると彼女と喧嘩した日の事を思い出す。
「あの日も雪が降ってたな」
「なんで言わなかったんだよ!」
「だって別に疚しい事してたんじゃないんだもん!」
喧嘩は簡単な理由からだったけれど、元の仲に戻るのは本当に難しい事だった。
そんな俺達はついに口に出してはいけない事を言ってしまった。
「どうせ俺の事なんて好きじゃないんだろ!?」
「どうせ私の事なんて好きじゃないんでしょ!?」
言った後の後悔と不安は計りしれないものだった。
「好きだよ!」
「!!」
彼女の強気な言葉に俺は驚いた。
「俺も好きだよ!!」
全く同じ事を言っているせいか、彼女は笑ってしまった。
その笑顔につられて俺も笑ってしまった。
ふっと空に目をやると、雪が。
「ごめんな この雪みたいに俺の掌から消えて無くなっちまいそうで、不安だったんだ」
「消えたりしないよ」
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