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しかし相手は活死体だ。
腹にめり込んだ刀をものともせず、店主は信也を捕らえた。
「ぐうッ!」
耳元に血なまぐさい息が吹きかかる。こいつらが呼吸をするのかは判らないが、この時の信也にはそう感じられた。
信也は店主の妻を蹴り上げると、後ろから組みかかる店主の頭を両手で抑えた。
「いやあああぁぁッ!誰か、誰か助けてえぇぇッ!」
優はどうする事もできず、ただ悲鳴をあげるだけだった。
信也は一瞬、思った。
馬鹿野郎。そんなにデカい声を出したら、コイツ等が集まってきちまうだろうが。
必死に抵抗しながらも、信也は横目で店主の顔を見た。
蒼白な顔からは生気というものが全く感じられない。
ソイツが涎を垂らしながら、大口を開けて噛み付こうとしているのだ。
地面に転がった店主の妻がのそりと起き上がってくる。
「く……ッ畜生!逃げろ!優ッ!」
優にだけは自分の最後を見られたくない。
信也は必死の思いで叫んだ。
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