我が儘

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ソイツ…町中で俺を殴り飛ばしたり… 関節外そうとしたり… 蹴り飛ばしたりしやがって… で、俺は命からがらソイツから逃げてきたんだよ… 金輪際会いたくない相手だ。」 大分、参ってる様に見える彼を見て彼女はこっそり笑った。 「お前なぁ…俺がボコられた話がそんなに面白いか?」 その問掛けに対して彼女は、笑いを堪えながら答えた。 「違うの…貴方、大変だったんだなぁって… そういえば、姉さんも三日前に町中で変な男が絡んできたからタコ殴りにしたって言ってたっけ…」 それに対して彼はキョトンとした顔をした。 「えっ、お前…姉貴とかいんのか?」 「うん。名前はナツキって言ってね。 私と違って美人だし… 人気者だし… 少し喧嘩早いけど… 優しい双子の姉なの…」 「お前ソックリの姉か… (待てよ…もしかして) なあ、姉貴の写真とか有んのか?」 「有るわよ…ほら、コレ」 そう言って彼女は、枕元から写真を取り出した。 「三年前の写真だけど… この右側の人が私の姉さんで左が私」 写真の二人は本当仲良く笑いあっていた。 彼は、その写真をじっと見て一言呟いた。 (やっぱりこの女だよ… 三日前俺をタコ殴りにした奴ってのは… あぁ、道理で似てたわけか…) 彼は、額に手を当て溜め息を吐いた後 彼女の方を向いた。 「なあ、ジュン… さっき、お前の姉貴。確か…ナツキ、だっけ? ソイツが三日前に町中でタコ殴りにした奴ってのは… 実は、俺なんだよ…」 いきなりそんな事を言われて驚きを隠せない彼女。 「えっ、そうだったの?」 「あぁ…今のでやっと理解出来たぜ。 全く、道理で声掛けても無視するわけか… ジュン、勘違いしちまって悪かったな…」 と、彼は頭を下げた。 「べっ別に気にしてないから… 私、よく姉さんと間違われる事多いから…」 彼女は、口ではそう言っているが… 内心ではちょっぴりすねていた。 (なによ…姉さんと私の区別位つけなさいよ。 確かに、姉さんと私はよく似てるけど…) それを察したのか彼は、彼女をそっと抱き寄せた。 「えっ、ちょっちょっと!!いきなり何すんのよ!!」 「いいから黙ってろ!!」 しばらくの間沈黙が続く。 どれくらいの時間が経過しただろう… 彼女は彼の心音に耳を澄ませていた。 (なんだろう… 死神の心音ってなんか人間と似てる… ふふ、可愛い心臓の音)
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