我が儘

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彼は語る… その村に向かう途中の山道で天使に襲われた事… ソイツが囮となり自分を逃がしてくれた事… その後、心配になって戻ってみたら自分の目の前でソイツが消滅する瞬間を見たという。 思わず黙り込む彼女。 その後、長い間暗い沈黙が続いた後 彼は呟いた。 「…だから俺は、ソイツの分まで生きなきゃならねぇんだよな… 畜生!!…なんで俺なんかの為に命捨てんだよ!! …何でだよ …まだアンタには学ぶ事がたくさん有ったのによ …畜生!!あの時、俺に力が有ればアンタを助けられたのによ… 全く…おっと話し過ぎちまったな …悪いな、こんな暗い話しちまってな…」 彼は立ち上がると同時に彼女の方を向いて笑いかける。 「まぁ、これは俺が辿ってきた道のりのほんの一部だけどな。 ああ…別に同情とか要らねぇよ… 俺には仕方がねぇ事なんだからよ… さてと、どうだ? 結構面白味のある話だったろう?」 彼女は答えない。 ふと、彼は上を向きながら彼女に言った。 「やっぱ、つまんなかったか… 悪いな、もう少し面白そうな話しとけば良かったな。 今度は面白いはなってうお!?」 彼女はおもむろに彼に抱きついた。 彼女は、震えながら彼に言った。 「ごめんなさい…貴方にそんな過去があったなんて… 気付いてあげられなくてごめんなさい… もう、話さなくて…いい、から」 「お前…俺の為に泣いてんのか?」 「泣いて…ない、わよ… ただ…涙が、止まらないの …花粉症、かな?」
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