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あの奇妙な出会いから一ヶ月が経過した頃…
とある町外れの病院の個室に二つの人影…
しかも、何やら会話が聞こえてきた。
「つまんない…もっと面白い話はないの?死神さん?」
ジュンは、病室のベットの上でダメ出しをしている。
死神は、彼女のそんな対応に込み上げてくる怒りを抑えつつ溜め息混じりに呟いた。
「お前なぁ…もう少し別の言い方は無いのか?こっちは賞金稼ぎに追われながらワザワザ話してやってんのに…つまんねぇはないだろ?」
彼女は、溜め息混じりに呟いた。
「つまらない物はつまらないの…
全く、久々に会いに来てくれたから面白い話の一つや二つ話してくれると思ったら…
全く、期待外れもいいとこだわ」
でも、口ではそうは言っているが…内心"面白い"と感じているのも又、事実。
別に彼女が天邪鬼という訳ではない…
彼女は、誰かと話していたいのだ…
一秒でも長く誰かと話していたい…
彼女には時間がないのだ…
いつ自分が死ぬかわからない状況に彼女はいつも脅えているのだ…。
そんな彼女の心の内を知らない彼は渋々話を続けた。
「解ったよ…じゃあ、俺が出会った侍の話をしてやるよ…。
確か…神無月改孫裕之って言う名前の侍でな…」
彼女はそれを黙って聞いている。「で、つまらない話が…
ソイツの使う剣術が特殊でな…
刀に気とか纏わせて心を無にするっていう戦い方でな…
ソイツは、熊なんざぁ平気で寝ながら10頭相手に出来るって言い切りやがってよ…
試しに寝込みを襲ったらよ
って…寝てやがる。
呑気にぐっすり寝やがって…
そんなにつまんねぇのか俺の話?」
気が付けば彼女はぐっすり眠ってしまった様だ…。
「全く…畜生、可愛い寝顔してやがる…
さてと、夜も明ける事だし…
俺もさっさとずらかるとすっかな…」
彼が部屋の窓から出ていこうとすると
「…ないで…」
「あん?」
気になって後ろを振り返えってみる
「何だよ…なんか用かって、なんで泣いてんだ?」
「私の事…忘れないで…」
彼女はそんな寝言を呟いていた。
この時、彼は何を思ったのか…彼女の方を向いた後
「誰がお前みたいな面白い奴なんか忘れんだよ…」
と呟いたかと思えば暗い夜空へと消えていった…。
「あぁ…そうそう、コレどうすっかな?まぁ、別に良いか…」
そんな呟き声がした。
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