ある夏の1日

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つい最近まで私は平和とは無縁の生活・・・硝煙が香る暗闇の中をがむしゃらに生きていた。   それは彼も同じだった。                   今は自転車に乗ってかばん片手に商店街に向かっている。                   でも、少し前まではホルスターを腰にぶら下げて単車を乗り回していたのだ。                         お陰で私の手は随分と血に塗れたものになってしまった。    ・・・復讐しようとしていた相手と同じ存在になったわけだ。  でも、彼に言わせれば『流させた血の種類が違うから気にするな』ということだ。                                      そんな事を考えてる内に商店街の入り口に着いていた。     さて、まずは八百屋にいこう。 彼はキュウリの丸かじりが大好きらしいからだ。        「おやっさん、キュウリある?」「今日は安いよ、買うかい?」 「うーん・・・もう一声!」  「ははは・・・これ以上は無理」「分かりました。この値段で買います・・・はい」       「毎度・・・なぁ唯ちゃん」  「何?おやっさん」      「今日は彼はいないのかい?」 「今日はちょっと用事があって、私1人なんです」       「だから彼の好物を用意して待ち構えるわけだね?」      「ええ・・・まぁ・・・」   私は、体がかあっと熱を帯びる気がした。いくらなんでも真っ正面からそんな事を言われれば私でもさすがに恥ずかしい。     「ん、じゃあこれで」     「ああ、じゃあな唯ちゃん」                 何気ない挨拶・・・      でも私はなんだか楽しくなる。
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