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「…すまぬ。晴明は、冷たい男ではない…」
晴明は抱き締められて、一瞬驚いて目を見開くも、すぐにまた表情を戻した
「晴明は、こんなに暖かいのに…本当に俺は馬鹿だ」
博雅の言葉に、晴明の顔から悲しみは消えて、代わりに柔らかい笑みが零れた
「…花は、どうでも良かったのだ。博雅が一緒なら…」
晴明は抱き締められたままポツリと呟いた
自分でも恥ずかしかったのか少し頬を赤く染めている
それでは意味がない、と思いつつも可愛らしい晴明の言葉に博雅も笑みが零れた
「では早く行こう。表に車を待たせてある」
「…断られたらどうするつもりだったのだ?」
晴明は気が早い博雅の様子にクスクスと楽しそうに笑う
「む…よ、良いのだ。ちゃんと晴明が来てくれるのだからな」
慌てた博雅の様子にまたケラケラとおかしそうに笑う晴明
博雅も何も言えず牛車に乗り込む
「博雅」
「ん……どうした」
「たまにはこうして誘ってくれよ」
フフッと微笑み自分を見つめる晴明の様子に、博雅は誘って良かった…と、ほっとしたのだった
◆終◆
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