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しばらくそうして泣きながら演奏を続けていた博雅だったが、急にぴたりと手を止め、頬に伝った涙の痕をごしごしと拭くと、ゆっくりと立ち上がった
家臣は音が止んだのに気付き、お休みになられますか?と博雅に向かって尋ねたが、博雅は首を横に振って口を開いた
「俺は今から晴明に会いに行く、車はいらぬぞ」
家臣は驚いてあれやこれやと言葉をかけるが、博雅は全く聞く耳を持たず、すたすたと足早に自身の邸宅を後にし、難しい顔をしたまま晴明の家に向かって歩き出した
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