袖絞りつつ

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「……ッ…俺の気も知らないで…」 違う 言いたいことはそんな事じゃない そう思っても言葉は止まらない 「…ッ…俺と、あの男……どっちが大切なんだ…」 自分は何と愚かなのだろう、と晴明は思った 天皇と自分を比べる事など、心の優しい博雅には出来ない そんな質問をすれば、博雅は酷く困るに決まっている 困らせたくなどないのに 全て分かった上で、やはり自分が大切だと、そう言って欲しいと思っていた 自分はなんて捻くれた奴なのだろう、そう思うと さらに晴明は涙が止まらなくなった 博雅は泣きじゃくっている晴明をそっと、壊れ物でも扱うかのように抱き締めた .
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