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法子は鬼のような形相で真治のTシャツの袖を引っ張った。「どうも、うちの真治がご迷惑をお掛けしました」清花と隼人に頭を下げる。その際に真治の頭を掴み、無理やり頭を下げさせた。
「いえ、そんな。私が話し掛けたからで……」
「いえ、どうせうちの馬鹿息子が変なことを言ったんですよね。本当にご迷惑をお掛けしました」法子は再び頭を下げ、真治のTシャツを凄まじい力で引っ張り、最後尾の車両を後にした。
足をばたつかせながら法子に引っ張られていた際、真治の眼は嘲笑う隼人の姿を捉えていた。清花はやはり気まずそうに隼人を注意していた。
「もう良いから!」清花や隼人が見えなくなった頃、眉間にしわを寄せながら真治が言った。法子は真治のTシャツから手を離す。
「もう子供扱いするなよ。それと、どんな馬鹿力してるんだよ」
「あんた、まだまだ十分子供よ。それと、あんたが力無さ過ぎなだけだから」法子は淡々とした口調で真治を負かす。真治はそれきり黙り込んでしまう。
やっぱり、美人は美青年としか付き合わないんだな……。向き合いたくなかった現実に直面し、真治はうつむく。
こうして真治の小さな恋は終了した。
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