妖精

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 ローカル電車に乗ってから数時間が経ち、ようやく田園に囲まれた美海部駅に到着した。  窓から覗く限り、ホームには数人の姿しか確認出来ない。皆の平均寿命はかなり高いことが一目で分かる。  服装もゆるゆるのズボンにTシャツといった感じで、都会育ちの真治にはある意味新鮮だった。  心地よくは無い「新鮮」に真治は溜め息を漏らす。 「お前、田舎を馬鹿にしすぎだぞ?」  何と言われようが、真治が道夫に反応する事はない。ふてくされた顔をする真治を見て、道夫は法子に目線で合図を送る。 「真治、田舎は嫌いなの?」 「ああ」 「でも、私達はしばらくここで暮らさないといけないのよ? 今からそんなに嫌がってたら、楽しい物も楽しくなくなるわよ?」  法子が真治に言い聞かせている時、道夫は網棚の上からボストンバッグを下ろし始めていた。  真治が窓の外を見ると、先程の清花と隼人が改札口を通っている姿が見えた。  何年も前の事を思い起こすように、真治は二人を寂しげに見つめる。そんな真治を見て、法子はボストンバッグを下ろす道夫を手伝いだした。  隼人は黒と白の重そうなボストンバッグを両手に下げている。逆に清花は両手に何も持っていない。  わがままな印象を受けた隼人だが、そんな姿を見てしまうと随分と印象が変わってくる。真治は心の中で少しだけ反省した。  モテる奴は顔やスタイルだけじゃないのか……。  申し訳なさそうに下を向きながら歩く清花と、下を向きながらふらつくように歩く隼人。二人は駅から出て、死角へと消えて行った。  真治は道夫と法子の方へ視線を向けた。ボストンバッグを両手に下げ、歩き始めようとしている。  声を掛けようと真治は口を開きかける。 「真治、あんたも手伝いなさい! 私のバッグをひとつ持つのよ」  法子の怒声に真治はがっくりとうなだれる。
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