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「俺はここに来て記憶を失った…愛する人間がいたのか、それも思い出せない。…でもここで大切な人間を失った…」
「あんた…」
「………」
「だが今は俺にも守りたい人がいる。お前と同じ、大切な人がいる。…外崎、俺を海軍に連れて行ってくれ」
「貴様…」
「あんた…本気かい?…」
「ごめん…おばちゃん。…でも外崎の言うことは間違ってないともおもう。…俺も大事なものを守りたいんだ」
おばちゃんはうつむき泣いていた…
「貴様…名は?」
「覚えていない…でも俺はこの家で生き延びた。…俺は今村…今村だ。」
「あんた…ありがとう…」
「はは、下の名前は無いのか?」
「下は知らん!なんとでも呼べ」
「あんた…一つだけ約束しておくれ…」
「…なに?」
「ウチにはもう戻らなくてもいい…でも、生きていておくれ…何があっても生き延びておくれよ…?」
「………」
「………」
軍人において、命の保証などあるはずもない…そのことは外崎も悟っていた。
「…当たり前だ!」
そう言うしかなかった。
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