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「な…こんな村まで…みんな!!!」
走った。頭の中は真っ白、だが俺は村に向かって全力で走った。ただひたすら…転んでもただ走りつづけた。
地に響き渡る激しい爆撃音、遠くから馬が跳ね上がるのが見えた。
村に戻ると、もはやそれは俺がいた村ではなくなっていた。込み上げる爆薬の臭気…焼け果てた集落…瓦礫の破片…全ては地獄の風景のようだった。
俺は叫び続けた。喉がかれ、血を吐き出すまで…声が出なくなるまで。
そして、生きた屍のように瓦礫の村をさまよった。
「あん…た、あんたかい」
足を止めた。振り返ると、泣き叫ぶ赤ん坊を抱いたおばさんだった。
「お…おばさ…ん…」
かれ果てた喉を振り絞るようにして、かすれた声を出した。
「け…賢…治は…?」
「……」
おばさんはうつむき、何も言わなかった。
「あ…ぁ…ぁぁ…」
声にできない叫びと共に、せき止められた水のように涙が溢れた。膝から崩れ落ち、地面に何度となく拳を打ちつけ…涙が爆風で渇いた大地をただ濡らした…
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