地下の感情

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 今度、テスト前はふたりで勉強しよう。  祐樹の家へ行く良い口実を見つけて、都は心中喜んだけれど、祐樹との時間をたくさん持ちたいという思いが増している自分に苦笑もした。  太陽が雲に隠れた。屋上に届いていた光はなくなり、涼しい風が吹き抜けて都の髪を揺らす。口にくっついてしまった髪を人差し指で取った。 「都」 「ん?」  すこしの沈黙を破ったのは祐樹の真面目さを孕んだ声。祐樹の方を向くと、箸を止めてこちらを見ている。切なそうな目だ。  なにか、あったのだろうか。 「どうしたの」 「お前さ、その、好きなやつとかいる?」  数瞬、都を動かすすべての機能が停止した。すうっと血が下がり、脳が凍る。何も考えられない。  少ししてようやく頭が回転しはじめると、今度は胸に針を刺されたような痛みが走った。同時に胸が大きな音をたてて存在を主張する。  都は壊れた機械のようにぎこちなく口をひらいた。 「どうして?」  違う、と脳内で何かが訴えてくる。そんなことを聞くべきではない。もっと、よくある男子の会話のように、明るく返さなくては。
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