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放課後、祐樹は自宅の台所で2人分のジュースを入れながら悩んでいた。
都が祐樹の家に来るのはよくあることだから、それは問題ない。なにが問題かといえば、1ヵ月ほど前からの都に対する自分の感情だった。
いままで気のせいだ気のせいだと目をそらしていたのだが、最近どうも、前にもまして都が可愛く見えてしまう。外見とか性格の話とはまた違った、好きなひとを見るときの、あの特別な可愛いさ。
この感情をどうしたものかと、祐樹は小さくため息をついた。
そのまましばらく、完成したジュースを前に考えていると、トントンと階段を降りる音がして、都がひょっこり顔を出した。
「どうした?」
「遅いから何してんのかと思って。迎えにきた」
にこりと笑うその顔に、どうしようもなくときめいた。抱き締めたい、キスしたい。
祐樹は頭の中で大きく首をふり、ジュースを手にとる。
「今できたんだよ」
本当は迎えにきてくれたことが嬉しいのだが、冗談っぽく憎まれ口でもたたいておかないとやってられない。
都が笑う。早く上行こうと言って背を向けた、自分より小さい後ろ姿に抱きついてしまいたかった。
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