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画面のなかの人が、ドアの隙間から覗き込む青白い顔を見つけて、叫び声をあげる。それに合わせて都の体が少しびくりとなった。
見なきゃよかったのに、と思いながら都のほうを見たとき、都が俺の服を遠慮がちに掴んできた。画面上で何かが起こるたびに掴む手に力がこもるのが分かる。
俺の胸は高鳴った。
どうしてこんなに、男心をくすぐるしぐさができるのか。
「ひゃっ」
ステレオからの、ガタンという大きな音に都が小さく声を上げた。
『だ、だれかいるの』
女優が怯えながら辺りを見回す。俺としては次はどこから何がでてくるのか、わくわくするのだが、都にとっては恐怖の対象でしかないらしい。
「こわ…」
「だから見なきゃよかったのに」
「だって」
いっそう強い力で捕まれて、服のしわが増える。俺の腕に何かが寄り掛かってきた。見れば、都の頭だった。
映画が佳境にはいると、肩、腕と触れている箇所がどんどん多くなってきて、最後には遠慮なしにすがりつく都の腕。
誰かに助けてくれと思ったことはもちろんあるが、これほどまでに切望したことはなかった。なぜなら俺の理性は今にも切れてしまいそうだから。
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