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ドクロの怪物とイサの会話を、若い警備員は眼を血走らせながら見つめていた。
「勇者イサッ!?
本物なのかッ!?
な、なんでもいい、助けてくれッ!!
殺されるッ!!
助けてくれぇえええ!!」
声を裏返しながら、若い警備員は必死にイサに向かって助けを求めた。
ほんの数秒前は死を覚悟していたが、もしかしたら助かるかもしれないと、若い警備員はかすかに希望を抱いていた。
それは、ブレイクも同じだった。
「勇者イサだ!!本物だ……、やっぱり正夢だったんだ……」
ブレイクは、突然の出来事のラッシュに、感覚が麻痺していた。
現実なのに、まるで夢の中にいるような……。
そう、それはまるで自分がマンガの登場人物にでもなったかのような、そんな錯覚を感じていた。
もう安心だ。
決して死から遠い所にいるわけではない。
それなのに、ブレイクは安心しきっていた。
「デヒアト!!俺と勝負しろ!!関係ないそいつは離してやれ!!」
イサは、ドクロの怪物に長剣を向けて威嚇した。
「我は腹が減っていてなぁ、しばし待て。
こやつを食べたら相手をしてやる」
ドクロの怪物がそう言い終えた瞬間だった。
“ズォンッ!!”
一瞬。
そう、瞬きをするくらいに一瞬だった。
『ウワァアアアアアアア!!』
その一瞬の出来事をしっかりと眼に映していたブレイクは、絶望から絶叫を上げた。
『デヒアトォオオオオ!!』
イサは、怒りに身を震わせ、ドクロの怪物に向けて咆哮を上げた。
「やれやれ、加減が難しい……。
また食べ損ねてしまった」
ドクロの怪物は、掌から光の塊を放出し、それを真っ正面から喰らった若い警備員は、一瞬にして黒炭に姿を変えてしまった。
“ボトッ!!”
ドクロの怪物は、触手で掴んでいた警備員の下半身を床に落とした。
「残念……。
まぁ、まだ1匹、美味しそうな人間が残っていてよかった」
ドクロの怪物はその無表情な顔を、腰を抜かしたブレイクに向けていた。
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