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抱き締めた肌は蒼白く冷たい。生前の愛らしかった面影はみじんも無く、苦痛に歪んだ顔が痛々しい。
妹の亡骸を抱き締めながら頬を濡らす私と同じく弟を抱き締めながら寄り添い合う双子の男女。
其処へ…4人の大人が各々の弟妹を奪ってく。
そして…
「ほい」
差し出された掌の中を見ると小さな手があった。
私は耐え難くなりプイとソッポを向く。
「食べないと生き残れないぜ…無駄にするなよ…」
目の前の男が悲しそうな顔をした。この男や他の大人のせいで妹は短い生涯を終えたのに。
私は手を受け取った。そして口へ運ぶ。
悪咽が出た。飲み込めない。その度の嘔吐は苦しい。
だが、自分の大事な大事な妹。何も知らない他人にどんどん食べられてゆくのは嫌だった。
私は、私の妹を食べながら…最後に信号が青になるのを感じた。
その日、皆が寝静まった頃。双子の男女は私に話しかけてきた。
「ねぇ…あいつら4人共。きっと最後の“食料”が無くなったら俺たちを食べるぜ」
「殺られる前にさ…」
「「「殺っちゃおうか…」」」
彼等の考えは私と一緒だった。
彼等の信号も青を記していたのだ。
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