扉の向こう

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扉の向こう

部屋を見渡していると、さっきまでは確かに無かったはずの扉 が目に入った。 茶色に塗られた木製の扉、その扉に金色の髪をした少年が身を 乗り出すように『生えていた』。 そう、生えている。 扉に腰から下が完全に埋められ、不安定な体勢にも関わらず平 然とそこに少年生えていた。 俺は半分引きながらもその少年が生えた扉に近づく。 たとえ嫌でも他に出口は無いんだ、腹を括るしかない。   「こ、こんにちわ」   片手を挙げて少年に声を掛ける。 口から出た声がついどもってしまった。 しかし、そんな事を気にした風も無く、少年は俺を見て二、三 回パチクリと瞬きをすると笑顔を俺に向けてきた。   「こんにちわ、久しぶりだなぁ、この扉を通る人が居るなんて! 」   嬉しそうにパタパタと手を動かし、子供らしい独特の笑みを浮 かべている。 いや、俺も子供なんだけどさ。 見た目は俺とほとんど同じくらいなのに俺より幼く感じさせる のは高く中性的な声と仕草のためだろう。   「ねぇ、ねぇ、此処を通りたいんだよね? ね?」   期待を込めたような瞳で俺を見ながら何度も聞いてくる。 確かに、俺は此処を通りたい。 他に出口は無いし、元来た道も無い。 それならば此処を通るしかないだろう。 そう考え、俺は少年の質問に頷いた。 すると、パァッという効果音が合うような満面の笑顔を浮かべ 、喜びからか弾んだ声で喋りだした。
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