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「俺が選ぶのは碧の扉だ」
そう俺が告げると少年は驚いたように眼を見開き慌てだした。
なんだこの反応…、何かあるのか?
「え、ほ、本当に碧でいいの?」
相手の心配そうな態度に迷いながらも俺はうなずいた。
するとガックリと肩を落とし、右手を俺の方へ向けた。
正確には俺の後ろの扉へと、だが。
「自然に包まれた碧の扉。
美しい自然とは裏腹にそこは迷いの森、一度入ったら戻れない。けれど嘘つき猫が君を導くよ、でもでも気をつけて?嘘つき猫は嘘をつく、全てが本当じゃない。食べられないように気をつけて」
ま、迷いの森?!
だからコイツは碧の扉を開けるのを渋ってたのか…。
今更気づいても遅い、俺が唖然としている間に少年は右手の指を鳴らした。
パチンという小気味いい音と共に碧の扉が勢い良く開いてしまった。
もう戻れない、そういうかのように急な突風が吹く。
それにバランスを崩すと共に俺は碧の扉へと吸い込まれていった。
「いってらっしゃい…、アリス」
俺が最後に見たのはそう言いながら心配そうに俺を見る少年の姿だった。
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