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その後、女からの電話はかかる様子もなく、ようやく安心して眠れる状況になった。しかし恵子はまだ不安そうな顔をしてなかなか眠れずにいた。
「眠れないのか?」
「こんな夜を何度も過ごしたから」
「そうか」
「誰かを好きになっては電話がなって、電話に出ては問いつめられて、翌日から彼氏に何かして私と彼氏を引き離そうとする」
「そんなに酷いのか」
「こうして一緒に寝られるのも、きっと今夜が最後なんじゃないかって、認めたくないけどいつもそんな事考えながら寝てるの」
「今回も同じような事が起こると思うか?」
「わからない。でも剛斗が初めてなの」
「何が?」
「私の代わりに電話に出てくれた人。それまで私が出てたけど、もう電話に出るのも嫌になってたから」
この様子だと恵子はかなり追い込まれていたのだろう。純粋に恋をしたいだけなのに、妨げられ続けられていることに気が滅入っているに違いない。
「剛斗が代わりに電話に出てくれた事も凄いと思ったよ。今まで付き合った人達は、ただ見守ってるだけで何もしなかったもの。でもこうして剛斗と寝るのが最後だなんて考えたくない。」
そう言って恵子は俺に寄りかかった。
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