32杯目 あんふぇあ

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 口の端を少し上げて、にやりと笑う竜に加治は顔を顰めると「このクソガキ……」と呟いた。勝ち誇った表情を見せる竜に加治は舌打ちをすると、息をついた。 「ったく、言えばいいんだろ、言えば」 「最初っからそうしろよ、めんどくせえな」 「……生意気な……」  加治は竜の態度に悔しそうな表情を浮かべつつ、手帳を開いて新しく得た情報を竜に伝えた。竜はその情報を真剣な表情で、右手を口元に当てながら一つも取りこぼさないように耳をそばだてて聞いていた。パタン、と手帳を閉じる。 「中々興味深い話だろ? まだピーンと来てねえ高校生探偵クンにとってはありがてえ情報じゃねえ?」  そう言って得意げな顔をした加治に竜は右手を口元から外して、下に向けていた視線を加治へとむけると、にやりと笑った。 「だれが来てねえっつった? あんたに言われなくとも目ぼしい人間はもう一人に絞ってる」 「は? マジで? え、ちょ、教えろよ。なんでソイツって絞ったわけ?」 「まだ言わねえ。後一つ確かめることがあんだよ」 「確かめること?」  きょとんとした表情を向けてくる加治から視線を外すと、竜は右手をダウンのポケットに入れて携帯電話を取り出した。  パカリ、と携帯を開いて着信履歴から相手の番号を探して、親指で通話ボタンを押す。加治は竜の様子をじっと見ている。
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