32杯目 あんふぇあ

6/6
前へ
/325ページ
次へ
 竜は携帯を耳に当てると、相手が取るのを待つ。延々と続いていた機械音が途切れる。 「もしもし、竜ちん? どったの?」 「おい、助手。今から言うこと5分以内に確認して来い」 「え? ちょ、なん」 「聞き逃すなよ、……――」  突然竜からかかってきた電話に珍しく戸惑っている由貴に竜は一方的に話すと、有無を言わせずに通話を切った。 「おい、今のどういうこと? 意味がわかんねえんだけど?」  通話を切って携帯を閉じた竜に、その様子を見ていた加治が声を掛けた。竜は視線を手元の携帯から、加治に向けると口元を少しだけ上げた。  8分後。  廊下で由貴からの電話を待っていた竜の携帯が震えた。それに反応して壁に凭れて一緒に待っていた加治が近付いて来る。竜は携帯を開くと、親指で通話ボタンを押して耳に当てた。 「3分遅い」 「ちょ、いや、これ、でも早いほ、うだって! 5分とか、やんちゃ過ぎるから!」  よほど急いだのか、携帯のスピーカーから聞こえてくる由貴の声は息が乱れ、途切れ途切れになっていた。 「で、どうだったんだよ」 「ビンゴ。竜の言った、通りだったよー。頑張った助手を、褒めて!」 「ハイハイ、ヨクデキマシタ。次は今から言う人間、今すぐ全員渡り廊下の入り口に連れて来い」 「心がこもってねえ!! つうか、また!? 助手使いあれえよ!!」  文句を言う自称美少年助手の由貴との電話を切ると、竜は携帯を閉じてダウンのポケットに仕舞った。竜は様子を伺っている加治に、視線を向けると口を開いた。 「教えてやるよ。首吊り殺人の犯人ってやつを」
/325ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3921人が本棚に入れています
本棚に追加