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「これが、現場に落ちていた煙草。悲鳴を聞いて駆け付けた時に見たから、間違いないはず。そうですよね、刑事サン」
「ああ……」
竜が視線を石坂に向けると、石坂は眉を顰めたまま頷いた。竜は由貴の手から煙草の箱を取ると、石坂と田所の前に突き出した。
「じゃあ、この煙草、本当に堀井が自分で買ったと思いますか?」
「は? いや、買ったからその場に落ちてたんだろ?」
何を言ってるんだ、と田所が不機嫌そうな表情を浮かべて答えると、竜は首を横に振った。
「俺は違うと思います」
「……なぜ?」
竜の言葉に石坂は怪訝な表情を向けて、問いかけた。竜は視線を石坂から律子へと向けると、困惑した表情を見せている律子に声をかけた。
「あんた、堀井って奴の彼女だったよな?」
「ええ……」
「堀井の吸ってた煙草って、これじゃなくて……こっちじゃねえ?」
竜は左手をダウンのポケットに入れると、そこからもう一つの煙草の箱を取り出した。青い文字で「SECRET」と書かれている、小さな箱。律子は竜が取り出した煙草の箱を目にすると、小さく何度も頷いた。
「そう、それ。泰雄がいつも、吸ってた。それ以外、持ってること見たことない……」
律子の答えに、竜は満足げに口の端を少し上げると、視線を刑事達へと向けた。石坂と田所は律子の言葉に眉を顰めている。
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