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「聞きたいことが山ほどある。今日は行かせない。」
そう言ってまっすぐ射るように見つめるものだから、バンビの涙も驚きで思わず引っ込んだ。代わりに胸が高鳴って困る。
「それってどういう…、」
言いかけたのをさえぎるように、高真は荷物と右手をひったくると、もう用無しとばかりにさっさとロビーから連れ出してしまう。
「今まで散々こき遣われてるんだ。たぬきジジイは1日ぐらい待たせとけ!」
「もう…! 強引過ぎますよぉっ…」
どんよりと重たかった枷を払拭して、仕切り直した2人には、あたりまえの笑顔がもどっていく――――。
「あ。帰ったらアレ朗読してみせろよ?」
「い、嫌ですよ! 書くだけでもすごく勇気がいったのに! 先輩こそ、私のどこが好きかちゃんと言ってくださいよ!」
「バーカ。オレの告白は高いんだ。対価をとられる覚悟はしとけよな。」
「ずる―い! なんですかそれ!」
また、高真が笑う。口では文句を言いながらもまんざらでもない様子で、バンビは頬を赤らめ手をひかれていくのだった。
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