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そこで、スパァァンといい音を立てつつ勢いよくその部屋の襖が開かれた。
壊れてしまうのではないのかという程の大きな音に、近くを歩いていた隊士達はビクリと肩を揺らし音を生み出した"鬼"の方へ視線を送る。
部屋の中から出てきたのは一人の男。
無造作な黒髪に鋭く光る相手を常に威嚇するかのような濃紺の瞳、印象強い左頬にある十字の刀傷。
整っていても凶暴性を感じてしまう常に寄せられた眉間の皺。
彼はここ──武装警察真選組の副長、土方歳和である。
土方はこめかみに太い青筋を浮かべながら庭に降りると、海斗の胸倉を力任せに掴む。
持ち前の腕力で彼を軽々と持ち上げると、腹立たしげに、地を這うような怒りを込めた声音で海斗に声を掛けた。
「海斗、起きろ」
まずは声を掛けて肩を揺さぶって起こしてみる。
だがしかし熟睡している所為かなんの反応も示してくれそうにない。
もう一度、先程よりも強めに揺さぶり声を荒げても効果はない。
土方の堪忍袋の緒は、いとも簡単にきれてしまった。
「何時まで寝てんだテメーはァァ!!」
「おぶっ!」
怒声をあげた瞬間、土方は海斗の頭を石を割るかの如く思い切り地面に叩き付けた。
当然、今まで深い眠りに落ちていた彼がその事に気付くはずもなく、地面と熱い熱い接吻を交わしてしまう。
痛みに意識が戻ったのか、容赦ない攻撃からノソリと起き上がった海斗は、キョロキョロと辺りを見渡した。
寝ぼけた半目で土方を捕らえると、ペコリと頭を下げて一礼する。
「おはようございます、副長」
「とっくに昼は過ぎてんだよ阿呆。第一、副長補佐がんなトコで寝てんじゃねえよ」
「眠かったら寝るのが俺の信条なもんで…ぶっ!?」
ガスッ!
ちょっと…どころではないが、ふざけた海斗にまたしても頭が地面と接触する。
苛立ってる土方に余計な言葉を付け加えた海斗には自業自得だ。
「もう一回寝るか?特別に末長く眠らせてやるぞ」
「…起きます」
すでにご存じの方もいるであろうが、彼らの会話から察せられる通り海斗は土方の補佐つまり真選組の副長補佐を務めている。
疲れるのはわかるが、流石に勤務時間に寝るのは頂けない。
此の様子を見る限り、普段からその勤務態度はよくない様である。
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