光が舞う頃

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 奴は、生きている。  奴の心臓は弱々しくとも、確かに脈うっていた。  でも、動かすことは出来ない。ここまで来たはしごは、一人が気を失っている状態で降りれるほど短くはないのだ。  この汚染物質の舞う地上で、目覚めるのを待つ他に道はなかった。  手を握ってると、暖かいことがわかる。でも、握り返されることは、なかった。  祈ることしか出来ないのが、悔しい。  どう足掻こうとも、私にこいつを直すすべはないのだ。  今、目を覚ましたところで、すぐに死んでしまうことは分かっている。でも、祈らずにはいられなかった。一分一秒でも一緒に生きて欲しい、と。 「そこにいるんですか……? イヴさん」  声が聞こえた。  固く瞑っていた目を開けると、奴が目を開いていた。  でも、その目に私が憧れた光は宿っていなかった。 「……目をやられたのか」  震え出しそうになる身体を必死で、押し止める。 「そう、みたいですね。あの赤さが目に焼きついている……。でも、それでも、良かった……」 やはり、奴はどこか幸せそうに微笑んだ。 「この世界は滅びる。百年もたたないうちに。だから、一緒に生きよう? 滅びるときまで。わ、私なら」 「『あなたを不老不死にすることができる』でしょ?」  奴が、私の言おうとしたことを言った。  なぜ知っているのだろう。そんな疑問を顔に出している私を見て、奴は少年みたいな笑みを浮かべる。 「僕のおじいちゃんにも同じこと言ったでしょう?」  
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