暗闇の中の光

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 奴は、にやりと笑う。その表情や仕草のどれもが、なんだか子供のようだった。 「そう言ってくれると思ってました!」  その瞬間、私が大きくため息をついたのは言うまでもない。  そして、奴は同時に立ち上がった。 「僕は、考古学者なんです!つまり、どういうことだかわかりますっ?」 「分からない」  即答したら、奴はなぜかしょんぼりとした。 「つまりっ! 科学者でもあるのです!」  確かに、奴の言っていることは最もであった。  世界は狂ってしまった。人間の手によって、何もかもが狂ってしまったのだ。  空からは酸性の雨が降り、かすかに残るオゾン層では紫外線を防ぐすべなどなく、地上の気温もどんどん上がっている。  母なる海さえも、陸を飲み込もうとしていた。まるで我が子が侵した間違いを全部我が身に引き取るが如く。  そして、酸性の雨で育った植物は正常には作用せず毒性の酸素を吐き出し、その酸素がさらに汚染された状態で植物に吸収される悪循環も起こる始末だ。  人間は地上を捨てる以外に方法は残されていなかった。  しかし、人間は生きることを諦めなかった。それと同時に新たなる世界、巨大な地下都市群を作ったのだ。 だから、旧文明を研究するものは、科学もまた勉強する。この世界では、考古学と科学は切っても切り離せない存在なのだった。 「そして、我が家は由緒正しき科学者の一族! 地上への出入り口があるのもまた我が家なのであります!」  
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