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「ほら、止まって。もう、地上に着くよ」
地上と地下をさえぎる鉄の扉に手が触れた。それも錆びていたけれど、まだ現役だというようにとても頑丈に出来ていた。
奴の一族には、この扉を開ける方法は知らされていないのだと言う。まあ、懸命な処置には間違いない。しかし、奴は私を見つけてきやがった。
すまないと思う、顔も知らない奴のご先祖様に対して。でも、全ては奴のせいだ。
そして、私は扉を開ける。私にとっては超えられない壁であり、こいつにとってはあってもないもの同然である扉を。
「はい、一発派手にやっちゃって下さいね」
派手にやったら、汚染物質流れ込み放題で非常に大変なことになってしまう。
でも、そんな言葉は口にせずドライバーもろもろを取り出して――もちろんこんなことに使うとは思ってもみなかった――、黙々と作業を進めた。
奴も緊張しているのか、何も言わない。当たり前だと思う。地上に出たら最後、間違いなく近いうちに死んでしまうのだから。
やがて、がちゃりと小さな音がした。地上へと続く道は、開け放たれたのだ。
「本当にいいの? 今ならまだ間に合う。でも、ここから出たらあんたは確実に……死ぬよ」
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