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私は、こいつに地上に出て欲しいのかどうか分からなかった。
今ではもっと熱くなってしまった鉄棒が、警告を発しているように思えた。
下を覗きこんでも、暗闇の中で見えるはずがなかった。
「大丈夫。行きましょう」
いつになく真剣な奴の声が聞こえた。何が大丈夫なのか、私には分からなかった。
ゆっくりと扉を押し開けて行く。
この扉の重さが私達の命を守っていたのだと実感した。なぜなら、開けた瞬間から肌がぴりぴりと痛みだし、空気を吸い込む度に肺が痛んだからだ。
奴もそうなのだろう、咳き込む音が聞こえた。
でも、私にはそんなことを気にする余裕などなく、無我夢中で地上に出た。次に、奴を引っ張りあげて、二人とも完全に地上に出た形となった。
地上には、昔からずっと変わらない風が、砂を巻き上げていた。おかげで何も見えない。片手で、長く伸びてしまった髪を押さえる。
そして、風はゆっくりと収まっていき、地上の風景が姿を表した。
砂漠が一面に広がっていた。地平線の彼方までさえぎるものもなく、ただどこまでも続いていた。
そして、今にも沈みそうな太陽が全てを赤く染め、空と地面の境をなくしていた。
「綺麗です……」
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