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声がして慌てて帽子のツバを持ち上げる。
するとそこには、白い歯を見せて笑う男がいた。
「運が悪いかもだ今日は。あ、お怪我はありませんかお嬢さん?」
男は紳士的な微笑みを見せるものの、でんぐり返しの途中みたいな格好のままでは格好がつくはずもない。
気が抜けるとはこうゆうことをいうのだろうと、少し頭が良くなった気分だ。
「……つか、アンタが大丈夫?」
人を小バカにするように小さく笑いながら、特に怪我をした様子も見せずに立ち上がる男。
今日はヒゲを剃らなかったんだろうその男は、思ったよりも背が高かった。
同じく立ち上がった私は、悔しいがその男の顔を見上げなければいけない。
「俺はほら、丈夫なのが売りだったりするわけよ。それよりお嬢さん、お怪我は?」
丈夫過ぎだろうと心の中で思いつつ、冷たい口調でこう返す。
「……ないよ。つか、一体何があったの?」
当然の疑問だ。
「いやぁ天井裏を掃除してたんだけど床がくさッ!」
飛び退く男。
豪快な音とともに巨大な木の板が落下。一秒前まで男がヘラヘラしていたその場所にぶつかって四散した。
「……腐ってたんだなこれが」
四散した木の破片を男が蹴るのを見て、私はなんとなく思った。
コイツの余裕は、腹が立つ。
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