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ケイトにミカ、そして花恵の朝食が済んだテーブルで、未だに朝食をとっている男がいた。
父、孝之である。
「ここは一体どこの国だ…?」
左手で頬を掻く。
どうやらいつの間にか我が家の食卓は英語圏に入っていたらしい。
「花恵は昔から知っているが、美佳はいつ英語を話せるようになったんだろうなぁ」
しみじみと呟くと、孝之は手元にあったお茶を飲み干した。
本当に、子供の成長は早いものだ。
手放しで育ってゆく子の姿が嬉しくもあり悲しくもある。
「うん。あれは母さん似だな」「あら、意外とお父さんに似てるところもあるわよ?」
ほほほ、と母さん登場。
どうやら私の食器を片付けに来てくれたようだ。
「そうかな?」
「あの子結構頑固なのよ?」
「そうか。それなら私に似てるんだな」
得てして誰に似てるだとかいうものは、当人にはわかりづらいものなのである。
「しかし…」
「どうかした?」
はあ、と軽くため息をつき、二杯目のお茶に手を伸ばす。
「食事の時にまで英語とは…これから大変そうだ」
「そうですね。頑張ってください、美佳のためにも」
まあ、夏休みが終わるまでの辛抱か。
そうして、ふと息子のことを思い出した。
どうやら私以上に大変なやつがいるようだ。
頑張ってもらうとしよう。
妹のために。
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