言葉の壁

4/4
前へ
/11ページ
次へ
ケイトにミカ、そして花恵の朝食が済んだテーブルで、未だに朝食をとっている男がいた。 父、孝之である。 「ここは一体どこの国だ…?」 左手で頬を掻く。 どうやらいつの間にか我が家の食卓は英語圏に入っていたらしい。 「花恵は昔から知っているが、美佳はいつ英語を話せるようになったんだろうなぁ」 しみじみと呟くと、孝之は手元にあったお茶を飲み干した。 本当に、子供の成長は早いものだ。 手放しで育ってゆく子の姿が嬉しくもあり悲しくもある。 「うん。あれは母さん似だな」「あら、意外とお父さんに似てるところもあるわよ?」 ほほほ、と母さん登場。 どうやら私の食器を片付けに来てくれたようだ。 「そうかな?」 「あの子結構頑固なのよ?」 「そうか。それなら私に似てるんだな」 得てして誰に似てるだとかいうものは、当人にはわかりづらいものなのである。 「しかし…」 「どうかした?」 はあ、と軽くため息をつき、二杯目のお茶に手を伸ばす。 「食事の時にまで英語とは…これから大変そうだ」 「そうですね。頑張ってください、美佳のためにも」 まあ、夏休みが終わるまでの辛抱か。 そうして、ふと息子のことを思い出した。 どうやら私以上に大変なやつがいるようだ。 頑張ってもらうとしよう。 妹のために。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加