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「あ、あんな乱暴しちゃだめよ…」
早織先生は力なく注意した。
「あんなんじゃ全然足りないよあいつには。」
「でも…。」
「あの」
横から声がした。
「先生怪我してるよ。」
隣に立っていた修くんにそう言われて早織先生はナイフが作った右の頬の傷を撫でてみた。指にべったり血がついた。血は肩のところまで流れ出して止まっていた。
次に修くんを見てみると、心配そうな顔でこちらを覗いているが…
「私は平気よ。すぐ治るよこんなの。修くんは大丈夫?」
恐がっている様子はない。修くんは横を向いて美幸と目を合わせた。
「…?」
彼女は一瞬警戒するような目をしたが、すぐに笑顔で自己紹介した。
「ようこそ、さくら幼稚園たんほぽ組へ!私は組長の日岳美幸で、生徒会長もしてるの。」
修くんも笑顔になった。早織先生もなんとか笑顔になった。他の園児たちも笑顔になっているが、それは正晴の醜態か、美幸の義務的な挨拶が可笑しいのだ。一方ありさは正晴をカバンから出した縄でぐるぐる巻きにして、教室の窓側の扉から外に引きずり出していった。
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