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「この幼稚園、いつもこうなんですか?」
「いつもこうですよ。だから私がいるんです。」
早織先生はやけににやけた白衣のおっさんに絆創膏をはって貰っていた。
さくら幼稚園は都会の幼稚園にしては割と大きいが、特徴的なのは保健室。保健室などない幼稚園もあるが、ここはちゃんと保健医がいる上、なんと子供用とはいえ、ベッドが20台もある。
「これでも足りないぐらいです。クラスひとつふたつ全滅する日もありますからね。」
あれから、早織先生は修くんの紹介を無事終わらせ、みんなで一緒に歌を歌った。
かえるの歌、大きな古時計、など。副園長先生に聞いたイメージより皆ずっと真面目だった。美幸が怖いのだろうか?正晴は庭の倉庫にぶちこまれたらしい。生命を脅かされた早織先生は、最早文句は言えなかったが、小さい頃から優しい保母さんに憧れていたため、暴力で問題児を押さえつけることにまだ納得できないでいた。
早織先生が保健室から出ると美幸が待ち構えていた。
「見回りに行くなら私と一緒にしな。休み時間は戦争だよ。」
幼稚園児に身を守って貰うなんて。
「心配してくれるのは嬉しいけど、みゆきちゃんは皆と遊ばなくていいの?」
「私が遊んでたら皆が遊べなくなる。」
何やら使命感を持っている美幸に対して早織先生は哀れみしか感じなかった。
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