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昭和59年11月5日
「よっしゃ、今日はマー君の誕生日やから、デカイ鴨取って来るわ」
祖父はそういうと私の頭をポンっと一回軽く叩き、猟銃を肩に担いで朝から家を出ていった
私の祖父は猟を趣味にしていて、私が幼い頃から家の中にはレミントンの二連銃やら散弾やらがゴロゴロとしていたのだ
「ジイちゃん、ホンマに撃ってくるんかな」
「期待せんときや、もう鴨なんか嵐山にはおらんしな
そもそも銃なんか持ったら危ないしアカンで、親父はよ銃を辞めへんかな」
父は一階の小さな事務所に置かれた事務椅子に座りテレビを観ながら、私の問いかけにボンヤリと答える
「ジイちゃんは、危ないもんを持ってるんか?」
「ケッ、なんやこのデビッドボウイて奴は、男やのに化粧しくさりやがって」
「なあ父ちゃん」
私が両手で父の足を持ち揺さぶると、父は眉間にシワをよせた
「分かった分かった、ちゃんとプレゼントは買ってあるがな、夜まで我慢しとけ」
「そうやのうてやな」
「え?お前ラジコン欲しかったんと違うんか?」
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