被害届けは神様宛てに

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俺は本日何度目かわからない怒声をあげた。   「それ、完全に天国の責任じゃねぇか!!!」 神様は迷惑そうに俺を見上げる。   「うるさいなー。それがわかってるから私が来たんじゃない」 そう言ってオレンジジュースを飲み干した。   「あんたの名前を奪ったあいつ、とっとと捕まえるわよ!」 そして颯爽と立ち上がると、ジュースの容器を放り投げる。   それが見事ごみ箱に収まってから神様は歩きだした。       「あ、そうそう」 出口で立ち止まり、こちらを振り返る。   「あんたは今、田村大輔ではないんだから、別の名前をつけないとね」 神様は腕を組んで考え込んだ。   「別に普通に田村でいいんじゃ…」 俺がそう言うと 「あ、『被害者A』とか『ガイシャさん』でいく?」 と、まるで天使のような笑顔で言った。   「よし、あんた今から『大ちゃん』ね!私のことはカミちゃんでも神っちでもなんでもいいわよ!」   俺は変な目で見られることを覚悟してから、店を出た。
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