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名前泥棒が一本の木の前で立ち止まっていた。
「お前なぁ…、勝手にどっか行こうとすんなよ」
名前泥棒の肩にポン、と手を乗せた。
しかし彼の顔は困惑に満ちていた。
「ここじゃない…。どこに消えたんだ?あれがないと、子供たちは…!!」
その言葉で大輔は気づいた。
名前泥棒の手を引き、走る。
間違いない。
こいつの捜し物はアレだ。
そして、こいつの正体は……
二人は獣医学部の研究棟に来た。
そこにある一番太い椎の木を見上げる。
「あった…」
名前泥棒が呟いた。
「あの日、胡桃の木が切り倒された日に発見されたこれは、獣医学部の奴らが保護して、新たに椎の木の上に設置してやったんだよ
人間が殺しちまった親鳥の代わりにな」
大輔は再び木の上のつばめの巣を見上げる。
名前泥棒―…いや、親鳥は涙を流していた。
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