被害届けは神様宛てに

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「んー、そうね。」 神様はオレンジジュースを飲みながら頬杖をついた。   「言うなれば『被害者』ね」 俺を指差して彼女は言った。   「被害者…ですか?」 「そう。『名前泥棒』の被害者。最近多いのよねー」 神様はため息をついた。       「名前泥棒…?」 聞き慣れない言葉に首を傾げる。   神様はオレンジジュースを置いて説明を始めた。   「天国で生き返りたいと望む人達がいるのよ。 だけど生き返るには一定の条件が必要なわけね。 それを満たせない人達が、勝手に地上に降りて誰かになりすましちゃうの。 それが名前泥棒。」   そしてまたオレンジジュースを飲む。     俺はなるほど、と納得していた。 「つまり今『田村大輔』になっているアイツは天国の人間で、勝手に地上に降りてきて俺になりすましていると…」   ストローをくわえながら神様はウィンクした。 「そう。御愁傷様ー」
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